日本海、津軽海峡、太平洋と、三方海に囲まれている青森県。
海との暮らしが身近なこの地で、「津軽びいどろ」を生産する北洋硝子は1949年、漁業用の浮玉(うきだま)を製造する工場としてはじまりました。
当時は他にも浮玉を製造する工場がありましたが、「北」の印をつけていたのは北洋硝子だけ。その印をつけた浮玉が、思いもつかない展開を見せてくれた事があります。
漁場にある浮玉が嵐などの何らかの影響で青森の海を離れ、黒潮に乗ってなんとアメリカ西海岸まで辿り着き、海岸に流れ着く漂着物を拾い集めるビーチコーマーたちの手に届きました。
浮玉のカケラを手にしたビーチコーマーは、「北」の印を見て「F」が背中合わせにふたつあるように見えたことからダブルFと名付け、海からの贈り物として大切にしていたそうです。
そして、そもそも硝子は何でできているのか?陶器は土物、磁器は石物と呼びますが、果たして硝子は?
正解は「砂」。その割合は、全体の70%をも占めていて、その砂を高温で24〜30時間かけて溶かしたものが、硝子の種になるのです。
その砂に青森県西海岸にある七里長浜の砂を混ぜて現れたのが、なんとも言えない緑色。見ているだけで心が寛ぎ高揚するのは、自然の力が引き出す色合いに根源的なものを感じているからでしょうか。
この奥深い津軽硝子からランプシェードが生まれたら、どんな表情を見せてくれるだろう。光を灯したら、どんな色を放つだろう。そのイメージを具現化し、生み出してくれるのは青森県伝統工芸士でもある篠原さん。
宙吹きで型を使わずに造形するという、高度な技術を持っている職人さんです。
棹を手に、坩堝から融けた硝子を巻き取ったら制作スタート。硬い表情で熱い硝子に向き合い、吹いたり、回したり、押さえたり、時には大きく棹を振ったり。キビキビと的確な動きは真剣勝負そのもの。炉の中の硝子は1000℃に達し、外に出すとすぐに冷めていきますがそれでも500℃。冷えると成形できないので、パッと炉に入れ出しては造形し、機敏な篠原さんの一挙手一投足にこたえていくように、どんどん硝子のかたちが変化します。
手仕事の美しさに見惚れているうちに、2つめのランプシェードが仕上りました。まだ熱の冷めやらぬ硝子を冷ます場所へと置いたら、篠原さんの工程は完了です。しかしその時!置いた瞬間、ほんのわずかな力加減で割れてしまいました…。
悔しさを滲ませながら、最後の一瞬まで気が抜けない、と言って割れた硝子を見せてくれた篠原さん。手仕事の厳しさと向き合ってきた人の、懐の深さを感じます。
仕上がったシェードを眺めてみると、硝子の向こうには手作りの硝子ならではの、揺らぎのある風景が。明治時代のモダンな洋館を訪ねた時に憧れた風景です。
硝子のランプシェードの良いところは、夜はもちろん昼眺めても良いこと。太陽の光が差し込むと、豊かな表情を見せてくれます。
硝子のランプシェードは、刻々と変化する日照とも連動していて、こんなにも光の表情が豊かになるのかと驚きます。昼夜問わず眺めていて愉しい。
そういえば、工場長の中川さんは、あかりを灯すことを、火を入れる。と、おっしゃってました。現場の風景が伝わってくる表現ですね。
今回制作した津軽硝子のランプシェードが、日用づかいのできる素敵なアートピースとして生まれたのを機に、今後皆さまにもお手にとっていただけるよう、販売させていただくことにしました。
さらに、津軽びいどろといえば色の粒子を散りばめた硝子の器が代表的。そんな色硝子に光が注いだら素敵だろうなぁ、というイメージをもとにランプシェードも制作しました。
Piranika Online Shopにてご紹介しております。ぜひご覧ください。
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津軽びいどろオフィシャルサイト
https://tsugaruvidro.jp/
津軽びいどろオンラインショップ
https://tsugaruvidro-online.com/
※ランプシェードのお取り扱いはございません。