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めが あったから いってきたよvol.18 西川©友美 ちょもらんま オープニング©パーティ

めが あったから いってきたよ
vol.18 西川©友美 ちょもらんま オープニング©パーティ

Text・Photo

Miyuki Kato

表現者があつまって、
美術もデザインも音楽も混浴のように。

2022年GW初日より、ヴィジョン・オブ・アオモリ vol.18 西川©友美「ちょもらんま」展がスタートし、ACACの野外ステージで、オープニング©パーティーが行われました。ヴィジョン・オブ・アオモリとは、青森ゆかりのアーティストを中心に、文化の担い手を紹介するという取り組みで、今回は青森県八戸市出身のグラフィックデザイナー・アーティスト、西川©︎友美さんです。(※以下愛称の「ちょも」とさせていただきます。)

トークセッションのメンバーは、ちょもが所属していた株式会社10(テン)の柿木原政広さん(http://www.10inc.jp/)。ちょもと同年JAGDA新人賞に受賞された、佐々木俊さん(https://ayond.jp/)と田中せり(https://seritanaka.com/)さん。学芸員の村上さんの4人。
村上さんが東京に展示を見に行こうと思ったきっかけから、ちょもという人のことや仕事のこと、エピソードなどを語ってくれました。

グラフィックデザイナーというより、アーティストな感覚。

始点は学芸員の村上さんが手にした、第19回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展 西川©︎友美展「dou?」のチラシでした。かわいいかつ和風なテイストで細かく描かれている絵を実際に見たいな、というのが始まりで、アーティストとしての印象を受けたそうです。一瞬で足を運びたいと思わせるということは、村上さんが展覧会を発信する時やアーティストと一緒に考える時も大事にしていることでした。

第19回グラフィック「1_WALL」グランプリ受賞者個展 西川©︎友美展「dou?」のチラシ

柿木原さんは、ちょもがグラフィックデザイナーってやだ、できればデザインしたくないと言っていながら仕事をしていて、客観的なデザインよりも自分から主体的にものづくりをしたいという思いが年々強くなってそれが表れていくのを見ていて、デザインの技術を利用しながらアートのパワーを身につけていった、そんな不思議な感覚だったそうです。

ラフに見えて、実は完璧なものづくり。

ZINEの話では、リソグラフ印刷の色の面白さを最大限にしたいということで、あまりやらない濃度の強いブラックを追求した結果、ページをめくると手が黒くなってしまうという事態に。それを体験として肯定する人もいると思うのですが、なるべく手につかないよう紙面に定着液を噴いていたそうです。なるほどそのZINEを開いてみると、リソグラフの鮮やかなインキが、ブラックの紙面の中に光っているように見え、際立たせることで色の面白さを引き出していると思いました。

佐々木さんが車のZINEを作るきっかけとなったのは、ちょもの作っている面白いところを参考にしている部分もあったそうです。ポスターとかは今まで自主制作はしていたけれども、ひとつキャラクターを作ってそれが勝手に展開し、人に渡ってコミュニケーションが生まれていくような。そこから発展させて車の絵本をつくったり。今まで自分が使ってなかった部分の脳みそで、グラフィックデザイナー一枚絵でやってきたこととは使うものが違っていて悩んだけれども、クリアして出版に向けてやっているといいます。

同じアイテムを見つけたり、
意味やストーリーを想像しながら楽しんだり。

今回の展示に向けて、なぜ鬼って存在するんだろう。やさしい鬼もいるんじゃないか。鳥居のところに鬼がいる神社が青森には結構あるから、そこを見にいってみたいという話もあったそうです。
意外と考えずに配置しているようで一つ一つに意味があって、自分の中にストーリーがあり、アイテムの中にある「ネギ」は日常の象徴であり、「やみあがり時計」は、やみあがりに作って自分が元気になって、それと一緒にいると楽しく・強くいられるという意味が含まれている。お守りのようなアイコンを身近にすることで、それを武器にして戦うようなところがあるといいます。

定番のアイテムがどこにあるのか、見つけるとなんだか嬉しい。

クリエイターではなく、つくる人間であるということ。

クライアントワークをやったとしても、自分の作品をやったとしても、スタンプのように同じアイテムが何度も出たり、全部一つのレールに乗っかっていて、全部自分の作品で、デザイナーでもなく、イラストレーターでもなく、ちょもである。誰かが作った肩書きではなく、ちょもでありたかったんだろうという田中さん。

柿木原さんは、過去の作品を見直してみて、ちょもはやるべきことをやった。自分として影響されているのは、ちゃんとやるべきことをやらないとだめだなぁと。やるべき意味みたいなことが、音楽だろうが何だろうが関係ないと思ってるみたいなところがあるので、そういうところに共感する人って結構やっぱり幅広くいる。
バンド活動で音楽の表現もしていたちょもは、JAGDAの新人賞の時にジャケ買いしたアーティスト「Chocolat Billy」の映像作品を制作し、その後、本人に送ったことから仲良くなったそうです。

Chocolat Billy より今回の展示に向けたお祝いの Special Message Movie

アイマスクをして、Mo©️EKを聴く体験。

2020年結成した、西川©︎友美(G, Vo. & Design)、French Condenser (G, Vo. etc)他によるバンドで、個展にあわせた曲のライブが披露されました。
はじめにアイマスクをしてくださいとアナウンスがあり、目は閉じ耳は開く感じに。徐々に音の粒が伝わってきます。やがて、アイマスクとってというフレーズが聞こえてきました。

ギターピックの裏にはQRコードがあって、「Yeah!」というちょものサンプリング・ヴォイスが、会場のスマホたちから重奏される仕掛けに。ドラムにビートが生じ、ベースは湖の上をステップするように、ギタリストは野外ステージを駆け回り「いま めが あったよね?」と歌いました。

受付でパンフレットと一緒にちょもデザインのアイマスクと、Mo©️EKのロゴとQRコードの入ったギターピックが配られていました。

やさしい鬼を、見に行こう。

惜しくも2021年に急逝されましたが、トーク&ライブや実際に展示会場にいると、みんな何かしら良いバイブスを受けている様子を感じました。
会期は6月26日(日)まで。気持ちの良い季節のうちに、ぜひお出かけください。

会期|2022年4月29日(金・祝)~6月26日(日)10:00〜18:00 会期中無休 入場無料
会場|青森公立大学 国際芸術センター青森 [ACAC] 展示棟ギャラリーB
主催|青森公立大学 国際芸術センター青森
協力|株式会社10
助成|芸術文化振興基金
後援|東奥日報社、陸奥新報社、デーリー東北新聞社、青森テレビ、RAB青森放送、青森朝日放送、青森ケーブルテレビ、エフエム青森、ABHラジオ、コミュニティラジオ局BeFM
http://acac-aomori.jp/

展示にはありませんが、ちょもの作品中にあるカードゲーム「CHORO」は、遊びかたをつくる。本体をつくる。動画をつくる。音楽をつくってもらう。どこまでもやってみたいことを大集合させてやり遂げているところが凄い。
「CHORO」取扱 青旗本屋(青旗本屋のロゴデザインは田中せりさん)
https://aohatabooks.stores.jp/items/61eb80e0113ce0343a08621f

カードゲーム「CHORO」のPV。 音楽は Chocolat Billy

– 2022.6/10追記
オープニングイベントでしか購入できなかったタオルやカードゲームが、青森公立大学内の売店にて取り扱いがあります。
※平日のみ営業9:00-17:00
・西川©︎友美 × ほぼ日コラボ「ほんとうにやさしいタオル」
・カードゲーム「Rocca CHORO」
展示を見た後に思い出のアートピースとして購入できるのが嬉しいですね。
ACACにミュージアムショップがなくて寂しかったのですが、大学との連携でこういう形になっている事が独特でいいなと思いました。