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まちなかでセンスの花を飛び回れ。ヒロサキアーツポリネーション

まちなかでセンスの花を飛び回れ。
ヒロサキアーツポリネーション

Text・Photo

Miyuki Kato

津軽のモダンな城下町、弘前のまちなかへ。

雨が降ったり止んだり気まぐれなお天気の中、弘前のまちなか全9箇所にアートが配置された「ヒロサキアーツポリネーション」を体感してきました。
ポリネーションという言葉の背景には、植物の花粉を運び受粉させるポリネーター(送粉者)からきており、アーティストや鑑賞者を、りんごが結実する仕組みになぞらえているそうです。
結実と繋がりを感じられるロゴタイプと綺麗な紫も、シンプルなのに目の離せない印象的なデザインに仕上がっていて素敵です。

ロゴタイプでラッピングされたショーウインドーが目を惹く。

どこからめぐるかその前に、まずは鑑賞パスを。

3箇所の購入可能な会場のうち、なんとなく弘前オランドへ。そこで受付対応してくれたのは、なんとこのプロジェクトを企画されたご本人でした。まちなかをめぐる機会を創出したい想いもあり、できれば歩いてめぐってみてくださいとのこと。マップをよく見ると車で動いていた時とは違う視点!歩ける距離だし何より近いことに驚きました。
そして鑑賞パスがトートバッグというアイデアも乙ですね。トートバッグにはマップが刷ってあり、各会場に設置しているスタンプを押していくシステム。全ての会場をコンプリートして弘前オランドにゴールすると、何か貰えるそうです。
(一般・高校生以上900円。小中学生200円鑑賞パスは缶バッヂ。未就学児無料。 ※旧青森銀行記念館は入館料別途、弘南鉄道大鰐線車両は運賃別途)

自分の押し加減がそのままトートバッグのデザインになる。

新たな視点がひらいてく。
9会場14組のアートをひとめぐり。

作品の会場には歴史的建造物が多く、背景に潜んでいるものや当時のセンスだけでも見応えがありましたが、そこへ融合すると別次元に飛ばされるのがアート。なかでも津軽ならではのセンスが開花したように感じました。

現代美術教室アートイズ 弘前オランド
11月27・28日に行われたワークショップの作品。このあと他会場作品との繋がりに気づくことになる。
佐竹真紀子 Sky スカイ
台風19号の記憶を掘り出す。
立原真理子 石場旅館
蚊帳に風景を刺繍する境目の在り方を探る作品。風景刺繍の蚊帳の中に入ってみたい。
安部澤 青森銀行記念館
年輪を感じる春夏秋冬の林檎の木。厳冬の絵には、名前にも雪が。
八木秀人 青森銀行記念館
いくつもの層・レイヤーの上に存在する人たち。
川口潤也 松ノ木荘
食は欲先行でいちばん言葉にしてこなかったものだとはっとする。料理の「理」を世界のことわりと考えるなんて。
スノーハンドメイド 松ノ木荘
1年を染めで表現した布とあったかそうな鳩笛。服を着た鳩笛は鑑賞者の欲しいという要望におこたえして、買うことができました。
下河原焼窯元安保正志 松ノ木荘
ぷっくり丸いフォルムと、絵付けのない目もないふんわりした鳩笛が新鮮。

遊歩道、川沿い、商店。歩く道中にも発見が。

こうしてめぐってみると、実は周遊するのに良い環境が整えられていたことがわかりました。お菓子屋の向かいに茶房があるのも弘前ならでは。寄り道してお買い物もいいですね。ちょうどトートバッグもあることですし。

窪田新 旧一戸時計店
りんごは見てよし!食べてよし!りんごについた傷を流れ星に見立てていた作者のエピソードがいいですね。
塚本悦雄 旧一戸時計店
あたり一面に広がる津軽平野のよう
津島友里恵 旧一戸時計店
美しいなめらかな陶器。色の入り方も素敵。
葛西薫/土手町商店街 弘前れんが倉庫美術館 カフェ&レストラン ブリック
ここは中にしっかり入って体験してほしいところです。不思議!

中川俊一 ギャラリーまんなか
人形ねぶたの技法で製作した作品。空洞が新しい視点・デザインを生み出していて新鮮でかっこいい。
中川俊一 土淵川遊歩道
月の満ち欠けと皆既月食に見えることに気づく。気づくと嬉しい。
相壁琢人 弘南鉄道大鰐車両線
電車にたっぷりの花。床には乗客が歩くことで完成するという押し花作品。鑑賞のみは一駅分の切符購入(入場券のみの見学は不可)。

この体験がこれから先に結びついていく。

アーティストの目から鱗の見立てや考え方によって、感性が影響を受けて喜んでいます。みる前と後では今後の暮らしも変わってくることでしょう。
会期は残りわずか12月5日(日)まで。時間をつくって是非めぐってみてください。
オススメのめぐり方は、中川俊一さんの土淵川遊歩道とギャラリーまんなかは、光る作品なので最後の方が良いと思います。そして、全部めぐったらゴールは弘前オランドへ行きましょう。
駆け足だと半日でめぐれます。道中おだんご食べたりの満喫コースならもうちょっと時間に余裕があると良いです。
詳しくは、公式サイトをご覧ください。
https://artspollination.com/