緊急事態措置・まん延防止等重点措置全面解除後の10月9日、奥能登国際芸術祭のアートめぐりをするべく、青森在住の我らは車で日本海側を南下し、能登半島へ向かいました。
すずと読む珠洲市は石川県の形を象徴的にする能登半島の最先端にあり、珠洲の地名の由来でもある須須神社創建の伝承から、能登国、海路で盛んだった北前船で栄えた歴史や、内浦・外浦と内陸の山々からなる風土など、濃厚で独特な風俗文化が育まれてきたところです。
金沢市からのと里山里海海道(通行料無料)白尾ICのカーブへ滑り込むと、一面の日本海に迎えられます。ここから北上すること2時間、芸術祭の最南・宝立エリアに到着しました。
早々といざ作品鑑賞へ!と向かいたいところですが、このご時世に必ず必要な手続きがひとつ。それは市内4か所に設置された検温スポットへ行くこと。
奥能登国際芸術祭では新型コロナウイルス感染拡大防止のため、検温と健康確認の後、その日限り有効なQRコード付きのリストバンドを配布し、受付必要な作品会場にて係の方にピッと読み取ってもらうと入場できるシステムを構築していました。開催に向けての努力が感じられ、すでに感謝の気持ちでいっぱいになります。
はじめの一歩の作品は旧南黒丸駅から。ここから珠洲市の能登線は終着駅の旧蛸島駅へ2005年まで奥能登の南岸を走っており、作品をめぐるルートとしても各駅停車さながらに駅もふっと現れてきます。廃線の記憶を辿りながら珠洲の記憶も辿ることに。
めぐる中には2017年の芸術祭から引き継がれた作品も。駅で言うと、旧上戸駅のラックス・メディア・コレクティブ(インド)「うつしみ」、旧飯田駅の川口達夫(日本)「小さい忘れもの美術館」、旧蛸島駅のトビアス・レーベルガー(ドイツ)「なにか他にできる」の3駅。
こういった前回の記憶を伴って作品を鑑賞するのは、印象を積み重ねる楽しみがあります。
どこからめぐるかプランを練るのも芸術祭の醍醐味。私たちは宝立エリアから、海岸線の各エリアを数珠つなぎにコマを進めていきました。ちなみにエリア設定のベースになっているのは公民館のコミュニティとのこと。大人も子供も地域ボランティアの方々みんなで各会場を盛り上げていて、地域の強い絆と人間力を感じます。
じっくり鑑賞したい気持ちをあちこちに置きながらも、限られた2日と半日で全ての作品を巡ることができました。きっかけがなければ歩くことのない道、開けることのない扉を芸術祭が開き、未知の領域へと誘ってくれました。
さらに2017年に飯田の旧映画館で見た、南条嘉毅さんの作品「シアターシュメール」が、建物とともに目に焼き付いていたので、スズ・シアター・ミュージアムでの劇場「余光の海」を見たときには心に染みるものがあり、旧映画館での名残惜しさを成仏させてくれたように思います。
月日が経つほど空き家や空き施設が増えて寂しくなっているのは、どこの地域でも抱えている課題ですが、そこから見えてくるものをしっかり見つめてアートの力で表現している珠洲は、これからもじわじわと人を呼び寄せ、編集されて、ますます行きたくなる場所に発展していくことでしょう。
ちなみに現在のページには2017年の作品を掲載していませんが、公式サイトには全ての作品が丁寧に紹介されています。芸術祭は終了していますが、サイトの方へぜひ、訪れてみてください。
奥能登国際芸術祭2020+公式サイト
https://oku-noto.jp/ja/area.html
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