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風合いから浮かびあがる情景と想い。テキスタイル作家 関レーコ

風合いから浮かびあがる情景と想い。
テキスタイル作家 関レーコ

Target

Reiko Seki

Text・Photo

Miyuki Kato

洗練されたセンスが凝縮された、素敵なギャラリーへ。

高層ビル群がひしめく仙台駅前から秋保方面へ50分ほど車を走らせ、細くなっていく山道をぬっていくと、素敵なギャラリー「Atelier Gallery 由季野」の門がぽっと見えてきます。
ちょうど、染色、家具、石の彫刻、そして関レーコさんのテキスタイルが集まった展示会「由季野2022秋の会」が開催されていました。(会期:2022.11/20〜23まで)

環境も建物も空間も。どこを切り取ってもセンスが滲む。

ひとつ一つの作品が心地よくセッティング。

八角のギャラリースペースに足を踏み入れると、開けている窓から清涼な空気と、すぐそばを流れる川の音色が室内に入ってきます。
中央には石の作品、奥には足の細い椅子、色鮮やかな染色。そして、レーコさんの作品は、ウッドデッキが作品の向こうに透けて見える一角に、儚い布がふわりと掛けられていました。
凍える河というタイトルがしっくりくる造形で、凍った川や水分をたっぷり含んだ雪のようでもあります。

そばを流れる本砂金川と凍える河のコラボレーションのよう。

さまざまな事象が内包された、
つめたさとあたたかさが混在する美しいテキスタイル。

「凍える河」は、オリヴィエ・フェルミ著「凍れる河」から影響を受けた作品だそうです。
その本には、著者が旅行で知り合った家族の子どもに学校教育を受ける援助をし、それを受けた家族が一大決心をして学校に行く決意をします。兄妹が自分の村から学校のある町に向かう旅路が出てきますが、その道中に出てくるのが凍った河に沿って歩いていくシーン。一歩足を踏み間違えると河に落ちてしまうような、危険と隣り合わせの道を命がけで歩いて学校の寄宿舎に入り、しかも家には数年間も戻らずに学びます。
その写真と文章に、深く心を寄せて制作されました。

さらに、この作品は中谷宇吉郎 雪の科学館で行われていた、「雪のデザイン賞」2019年の入選作品でもあります。
雪の科学館は、「雪は天から送られてきた手紙である」と、雪の研究に生涯を捧げた中谷宇吉郎を記念して作られた、石川県の片山津にある磯崎新設計による建築です。
中谷宇吉郎生誕100年を記念してスタートした「雪のデザイン賞」は、2020年の第10回をもって終了していますが、雪や氷のモチーフが見事に昇華した作品が全国から集まる、素晴らしいコンペでした。

凍える河

表現することは生きること。少年院にてアートの学び。

レーコさんは元小学校の教員で、震災を機に表現で生きていく道を強く望んで活動しています。
そして、創作活動を続けていく中で2015年4月から青葉女子学園の少女たちとの授業が始まり、2017年5月からは東北少年院の少年たちとも。両方を合わせて、月3回の授業を行っています。
少年院にて講師として、少年少女たちとの表現を通したコラボレーション活動をしていくうちに、生徒の中には、レーコさんとの出会いをきっかけに、アートを通じて自己を表現する道に目覚めた人もいるそうです。子どもたちとレーコさんの関わりは、学校を離れてもなお、より豊かな相互コミュニケーションに発展しているのだと、お話を伺いながら感じました。
そして、活動の現状を聞いて驚いたことがあります。それは、生徒の作品が本人の手に渡されることなく、その多くは焼却されているということ。ただ、少しずつこの課題に取り組む動きもあるそうなので、より良い方向へ行くことを望みます。
観覧の機会はありますので、「レーコと少年院の教え子たち」と検索してみてください。東北工業大学一番町ロビーにて、コラボ展を夏に3年継続して開催しています。
レーコさんの個展の方は、東京聖路加国際病院の画廊にて毎年春秋に開催しています。来年は機会が増えて、4回開催予定とのこと。
日々や今後の予定などは、ブログやインスタグラムをご覧ください。

関レーコ
Blog http://atelier-reiko.cocolog-nifty.com/
Instagram https://www.instagram.com/reikotextile/

Atelier Gallery 由季野
Website https://ykn.co.jp/
Instagram https://www.instagram.com/yukino.inc/