景色が変化し、感覚を触発する。
舞踏家 福士正一

オドラデク？道路が劇場？日常に潜むナニカ。

福士さんは、「オドラデク道路劇場」という名前で、路上、商店街、公園、畑など、身近などこにでもある風景を舞台に踊る活動をしています。劇場などの舞台ももちろんありますが、日常の中に分け入って生まれる何かを、舞踏を通して表現する行為なのです。
舞踏をはじめたきっかけは、山形大学在学中に森繁哉氏と出会ったことから。以来青森を拠点に40年以上、国内では寺山修司記念館やアートキャンプ白州、海外ではフランス、コスタリカ、ベトナム、台湾、バヌアツ共和国など、舞踏を通してその場と人と交流してきました。
牧良介氏とも、津軽弁の一人芝居と福士さんの前衛舞踏の組み合わせで、1989年2月から1991年11月まで集中的に巡演し、活動を共にしました。バヌアツ公演もそのうちの一つです。
そして、平成26年3月までは青森市役所に勤務しながら活動されていて、舞踏と公務を両立してきた、稀有なバランス感覚を持つ方です。

海のある公園で、石碑と踊る。

青森市には海のある珍しい公園「合浦（がっぽ）公園」があります。ここはワンちゃんとの散歩やランニング、春は桜まつりで夏は海水浴場と、市民なら誰もが知っているみんなの憩いの場。
そして、なんとなくあちこちにある石碑が立っていますが、それが31基もあることや案内看板が公園内に設置されていることは、あまり知られていません。
その石碑に注目したイベントをと、青森まちかど歴史の庵「奏海」の会が「青森市合浦公園石碑巡り」と題し、会員による石碑の解説と、福士さんの舞踏という内容で2023年6月に開催されました。

日常が、異化する体験。

いつもの公園にわずかな音色をつけ、福士さんが石碑と関わりながらその場の空気を体全体に受けたり流したりしながら踊っていると、一般の人も異変に気づいて何かを探ろうと、足を止めたりして観客に入り混じります。
散歩していたワンちゃんはビクッと驚いて興奮し、吠えたりという場面もありました。
目には見えないけれど、福士さんが踊ることでそこに何かあるような感覚になり、風や波の音もいつもより解像度が高く聞こえてくる。
舞踏には、感覚を触発する力があるようです。

生活に緩やかに乱入する舞踏。

「オドラデク道路劇場」とは、生涯「劇場」へ足を運ぶことのない人に舞踏を目撃してもらうため、生活の現場に出かけて行って日常の風景の中で踊るという、生活に緩やかに乱入する舞踏を目指している活動。
「オドラデク」の由来は、フランツ・カフカの短編「家父の気がかり」（訳によってタイトルは変わる）に出てくる、星型の形をした道具なのか生物なのかもしれない不思議な存在のこと。
生物とも無生物ともつかないモノが、階段の手すりなど日常の風景の中に登場し、筆者と短い会話もする。
稽古場を開設する時に、名称を川仁宏氏に相談し「生成空間オドラデク」と名付けてもらいました。
福士さんは、このオドラデクのような日常の中にふっと気がつくとそこにいる、踊りの情景というのか、そうありたいと目指して踊っているそうです。
オドラデク。舞踏を鑑賞することで、わたしたちの無意識に棲んでいるナニカを覗けるかもしれません。

今後の予定は、
土方巽あきた芸術祭 久保田城下おどり旅 2023
会期：2023年8月26日(土)〜9月3日(日)
↓福士さんの出演イベント
アジアトライAKITA千秋芸術祭2023
9月1日(金)　13：30〜20：00　千秋公園本丸・お隅櫓下　入場無料
旧長谷山邸・鎌鼬の里芸術祭2023
9月4日(日)　10：00〜14：30　旧長谷山邸・鎌鼬の里　参加費1,000円（軽食付き）
https://www.facebook.com/asiatriakita/

西の高野山・弘法寺秋の例大祭
9月23日(土・祝)　8：30〜17：00頃まで　入場無料
↓福士さんの出演イベント
14：00頃〜　舞踏と津軽アートコラボレーション公演
https://nishinokouyasan.com/　

そのほか、最新の情報は福士さんのSNSをご覧ください。
FB https://www.facebook.com/shoichi.fukushi.1
TW https://twitter.com/shochan_dance